首都ウール・ヤーワラカの街並み
Official Report · Music & Anthem

音楽と国歌 Music & the National Anthem

大音量ではなく、静けさで人の心を包む——やわらかさの国の音楽は、 眠りと休息のためにこそ磨かれてきました。国歌『綿雲の誓い』から 子守唄、綿太鼓の響きまで、わが国の音楽文化を公式に解説します。

国歌綿雲の誓い
国民的ジャンル子守唄
代表楽器綿太鼓・ワタ笛
音楽観静けさの美学
Overview · 序

音を、やわらかく鳴らす国

世界の音楽が「より大きく、より速く」を競うなかで、わが国はただ一つ、「より静かに、よりやわらかく」を追い求めてきました。

クッション共和国の音楽を初めて聴いた外国の旅人は、しばしば戸惑うといいます。あまりに音が小さく、あまりに穏やかで、いつ曲が始まっていつ終わったのかさえ分からない——と。しかしそれこそが、この国の音楽が二世紀半をかけて到達した境地なのです。押されればへこみ、力が抜ければ戻る。そのやわらかな弾力を、わが国は音の強弱にも見出しました。大きな音で人を圧倒するのではなく、静かな音で人をほどくこと。それが、この国の音楽家たちが受け継いできた使命です。

憲法第20条が国民に「休息の義務」を課すこの国において、音楽の最も尊い役割は、人を安らかな眠りへと導くことでした。だからこそ、わが国の音楽は激しさよりも余白を、旋律の華やかさよりも響きの手触りを大切にします。本ページでは、国歌・子守唄・伝統楽器・現代音楽の四つを通して、やわらかな国の音の姿をご案内します。

Anthem · 国歌

国歌『綿雲の誓い』

1962年のクッション革命ののち、独裁の時代を越えて再び立ち上がった国民が、みずからの手で選び直した歌です。

National Anthem ── 綿雲の誓い

低反発の魂、高反発の意志
われら綿雲、風にちぎれず
たとえ潰されようとも
我らは再び膨らみ立つ
やわらかきこの手に、民を抱きて

『綿雲の誓い』は、単なる愛国歌ではありません。「低反発の魂、高反発の意志」という一節は、ゆっくりと沈み込んで人を受け止める優しさ(低反発)と、けっして折れずに押し返す強さ(高反発)という、相反する二つの性質を国民の理想として謳ったものです。この二つはそのまま、わが国の主力素材ポリウレタンフォームの二大特性でもあり、産業と精神が分かちがたく結びついていることを示しています。

とりわけ「たとえ潰されようとも、我らは再び膨らみ立つ」の一句は、1931年の工場放火と、続く独裁による産業の衰退——そこから革命を経て復興を遂げた国民の歴史そのものを歌い込んだものとして、いまも式典のたびに人々の胸を打ちます。曲調はきわめて穏やかで、行進曲のように高鳴ることはありません。国民は直立不動ではなく、多くの場合、座布団に腰を下ろした姿勢でこれを斉唱します。

Genre · 国民的ジャンル

子守唄という国民音楽

休息を国是とする国にとって、人を眠りへ導く子守唄は、最も高貴な音楽ジャンルです。

他国では子ども向けの素朴な歌とみなされがちな子守唄を、わが国は音楽の最高峰に位置づけてきました。理由は明快です。眠りこそが休息の完成形であり、その眠りへ人を送り届ける歌には、あらゆる技巧と慈しみが求められるからです。クッション共和国の子守唄は、生涯を通じて聴かれます。赤子を寝かしつけるためだけでなく、疲れた大人が自らを休めるためにも、老いた者が安らかな最期の眠りにつくためにも、同じ調べが静かに口ずさまれるのです。

国立クッション研究所の音響部門は、人の緊張を最もやわらげる低反発の周波数帯を長年研究してきたとされ、その成果は現代の子守唄制作にも活かされていると言われます。首都ウール・ヤーワラカには子守唄だけを専門に歌い継ぐ「眠りの唄い手(ネンネ・ウタイ)」という職があり、その名手は職人位に準じる敬意をもって遇されます。

Instruments · 伝統楽器

やわらかな音を生む三つの楽器

わが国の伝統楽器は、いずれも「音を尖らせない」ための工夫に満ちています。

楽器 01 · 打

綿太鼓(わただいこ)

響きを吸う打楽器

胴の内側にクッション綿を厚く張った太鼓。打っても鋭い音は立たず、ぽすっ、ぽすっとやわらかく沈む響きを生む。祭りでも眠りを妨げぬよう、音は遠くまで届かないように作られている。

楽器 02 · 管

ワタ笛(わたぶえ)

息のかすれを聴かせる笛

管の途中に綿の弁を仕込んだ笛。澄んだ高音は出ず、つねに息のかすれが混じる、風のような音色を奏でる。子守唄の主旋律を担う、この国で最も愛される管楽器。

楽器 03 · 弦

詰め弦(つめづる)

余韻を抱く弦楽器

共鳴箱をクッション素材で満たした弦楽器。弾いた音はすぐに包み込まれ、長く伸びずにやわらかく減衰する。その短い余韻の美しさこそが、この楽器の真価とされる。

Contemporary · 現代の音楽

静けさは、いま世界へ

現代のクッション共和国では、伝統的な子守唄の美学が、環境音楽や、ゆるやかな拍を刻む音楽へと形を変えて受け継がれています。眠りと集中のための音楽は、いまや国境を越え、世界中の「休みたい人々」に静かに求められるようになりました。大音量で自己を主張しない——それゆえに long く聴いていられる。皮肉にも、最も控えめなこの国の音楽が、騒がしい世界においてかえって強く響きはじめているのです。

押されても、また膨らむ。折れても、また鳴る。わが国の音楽は、国歌が謳うそのしなやかさを、いまも静かに奏で続けています。どうか一度、音量を絞って耳を澄ませてみてください。やわらかな国の音は、大きな音のなかではけっして聞こえないのですから。

クッション共和国 政府広報室 文化・遊戯課 / ウール・ヤーワラカ 2026年

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